
【Docker基礎】なぜデータやプログラムを隔離したいのか
Docker はサーバ環境を“コンテナ”によって分離・隔離できる技術ですが、そもそも「なぜデータやプログラムを隔離する必要があるのか?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
データならともかく、プログラムまで完全に隔離するメリットがどこにあるのか、イメージしづらいかもしれません。そこでここでは、プログラムの実行環境やライブラリの衝突といった、サーバ運用でありがちな問題を紐解きながら、Docker による“隔離”の必要性を考えていきます。

プログラムと実行環境・ライブラリの関係
ソフトウェアやアプリケーションを動かすには、実行環境やライブラリが必要です。
- PHP のプログラム → 「PHP の実行環境(ライブラリ含む)」
- Python のプログラム → 「Python の実行環境(ライブラリ含む)」
さらに、WordPress のようにデータベース(MySQL など)を別途用意しないと動かないケースもあります。複数のプログラムが同居するサーバでは、これらのライブラリや設定が重なる、あるいは同じディレクトリを使うなどで、思わぬ衝突が起きる可能性が高まるのです。
バージョンの衝突とアップデートの問題
1台のサーバ上で複数のアプリケーションが動いているとき、同じプログラムやライブラリを 異なるバージョン で要求する場合があります。
システム | 使用中のプログラム | 必要バージョン |
---|---|---|
システムA | 会計プログラム | ver.5 |
システムB | 同じ会計プログラム | ver.7 |
システム A は ver.5 でないと動作しないが、システム B は ver.7 にアップデートしたい。このように、1つのサーバにインストールされている共通ソフトウェアを別のバージョンにしたい場合、衝突が起きて片方が動かなくなる危険性があります。
アップデート時だけでなく、サーバ構築時にも「複数プログラムの共存がちゃんと動くのか?」という検討が必要です。ディレクトリを共有した結果、設定ファイルの書き換えや混在によってソフトウェアが壊れてしまうトラブルも珍しくありません。
同居問題を解消する「隔離」とは

プログラムのアップデートやディレクトリ共有の衝突を防ぐために、プログラムやデータを隔離しておくのが効果的です。
Docker はコンテナごとに OS レベルで分離された小さな環境を用意するため、1 台のサーバ内でも、他のコンテナから完全に独立したプログラムやライブラリを動かせます。
コンテナ | 内容 |
---|---|
システム A コンテナ | システム A + 会計プログラム ver.5(依存ライブラリ含む) |
システム B コンテナ | システム B + 会計プログラム ver.7(依存ライブラリ含む) |
このようにコンテナごとにプログラムを区切っておけば、片方をアップデートしても、もう片方には影響しません。
Docker コンテナを使うメリット
- 異なるバージョンを同居
通常はサーバに 1 つしか入れられないプログラムでも、コンテナ内なら複数バージョンを同時に動かせる。 - ディレクトリ・設定ファイルの衝突回避
コンテナ間でファイルが混在しないので、設定ミスや書き込みエラーによる破損を防ぎやすい。 - アップデートが安全
既存コンテナと新バージョンのコンテナを並行稼働して検証すれば、トラブルが起きてもすぐに切り替え可能。
まとめ
サーバ上で複数のプログラムを動かすと、バージョンや設定ファイルの衝突、ライブラリの不一致などがしばしば問題になります。
しかし Docker コンテナを使えば、それぞれを独立した環境に分離できるため、衝突を最小限に抑えながら安全に運用できます。
どのようにコンテナを作り上げ、実際にプログラムやデータを隔離していくのかは、2章の「Dockerが動作する仕組み」で、より具体的な手順を踏まえて解説していきます。