【Docker基礎】複数のサーバ機能を同居させる

 Docker には、「1台の物理サーバ上に複数の機能サーバを安全に同居させられる」という大きなメリットがあります。
 これまで見てきたようにサーバの機能はソフトウェアによって提供されますが、同じ物理サーバ上で別々の機能を動かす場合、ライブラリのバージョン衝突や設定の混在など、さまざまな問題が起きがちです。そこで Docker の コンテナ が役立つわけです。コンテナによって各サーバ機能を完全に独立した“部屋”に分けることで、安全かつ柔軟に同居させることができます。

安全に同居できる理由

 1台のマシン上で Webサーバ と メールサーバ を動かす場合、従来はそれぞれのソフトウェアを同じ OS 環境に入れるため、アップデートや設定変更の際に互いへ影響が及ぶ可能性がありました。
しかし Docker のコンテナは下記のように 隔離 されています。

コンテナ役割衝突リスク
WebサーバコンテナApache などの Webサーバ他のサーバ機能の設定やライブラリと衝突しない
メールサーバコンテナPostfix などのメールサーバアップデートしても Webサーバに影響しない

 コンテナ同士はカーネルを共有しながら、ファイルシステムやネットワークなどを論理的に分離しています。そのため、一方をアップデートしても、もう一方へ余計な影響を与えにくいのです。

複数の同じサーバ機能も並立可能

 通常、1台の物理マシンには同じ種類のサーバソフトウェアを基本的に1つしか入れません。例えば “Apache(Webサーバ)” は1インスタンスだけ、というケースが多いでしょう。
しかし Docker を使えば、同じ種類のサーバを複数個 並立 させることが可能です。

コンテナ内容
プロジェクトA用WebサーバAプロジェクトで利用する Apache、データ、設定など
プロジェクトB用WebサーバBプロジェクトで利用する Apache、データ、設定など

 AプロジェクトとBプロジェクトでサーバを分けたいが、実際には両方ともそれほどリソースを食わない。このような場合、コンテナを二つ立ち上げれば、1台のマシンに2つの Apache を動かせます。余計なサーバマシンを用意する必要がなくなり、コスト削減や管理の負担軽減に繋がるのです。

アクセス制御や権限管理も安心

 もしコンテナ技術を使わずに同じ環境に複数のプロジェクトを同居させる場合、以下のようなリスクが発生します。

  • 設定ファイルの誤操作
    Aプロジェクトのファイルを Bプロジェクトのメンバーが上書きしてしまう。
  • ライブラリのバージョン衝突
    Aプロジェクトが必要とするバージョンと Bプロジェクトが必要とするバージョンが競合する。
  • Webサーバの共用
    Apache は1つしか起動できないため、設定の一部を共有せざるを得ない。

 Docker なら、コンテナごとにファイルシステムも独立しているので、プロジェクト同士の干渉を最小限に抑えられます。アクセス制御や権限管理も、各コンテナ内部で完結するため、より安全に運用できます。

開発・本番環境の移行が容易

コンテナのメリットは「隔離」だけではありません。
コンテナ自体を持ち運べる(移行できる) という点も大きいです。例えば、開発環境で動作確認をしたコンテナをそのまま本番サーバへ移行すれば、環境差異によるトラブルが減ります。

  • ローカル開発環境
    ・開発者のPC上でコンテナを起動し、アプリを動作テスト
  • 本番サーバ
    ・同じイメージを本番サーバ上にデプロイ
    ・バージョンや設定が一致しているため「開発では動くけど本番で動かない」問題を回避

 このように、コンテナ単位で環境をパッケージングして扱えるのは、Docker が広く普及した大きな理由です。

まとめ

  1. Docker コンテナでサーバ機能を 完全に独立 させることで、バージョン衝突や設定ファイルの混在を防げる。
  2. 同じ種類のサーバ機能 を1台のマシンに複数立ち上げられるため、リソースを有効活用できる。
  3. 設定ファイルやライブラリを分離しつつ、本番環境への持ち運び も容易なので、開発効率と運用の安全性を両立できる。

 このように Docker のコンテナ技術を活用すると、サーバ機能の同居がぐっと楽になり、プロジェクトごとの管理もスムーズに行えます。次の章では、実際にどのようにコンテナを立ち上げ、複数サーバ機能を連携させるのかをより具体的に見ていきましょう。