【Docker基礎】Docker HubとDockerレジストリ

 Dockerを効果的に活用するためには、コンテナイメージの保存と配布が欠かせません。このセクションでは、Docker HubDockerレジストリについて詳しく解説します。これらの概念を理解することで、イメージの管理や共有がスムーズになり、チーム全体の開発効率を向上させることができます。

1.Dockerレジストリとは

 Dockerレジストリは、Dockerイメージの配布場所を指します。公式に提供されるものから、個人や企業が運営するプライベートなものまで、さまざまなレジストリが存在します。レジストリを利用することで、イメージの保存、共有、管理が容易になります。

主なDockerレジストリの種類

レジストリ名説明
Docker HubDocker社が公式に運営するレジストリ。多数の公式イメージが公開されています。
yamadaのレジストリ個人や企業が運営するプライベートレジストリの一例。
ABC社のレジストリ特定の企業が内部で利用するカスタムレジストリ。

図:Dockerレジストリの構造

Dockerレジストリ
   ├── Docker Hub
   ├── yamadaのレジストリ
   └── ABC社のレジストリ

2.Docker Hubとは

 Docker Hubは、Docker社が公式に運営するレジストリの一つであり、最も広く利用されています。多くの公式イメージ(例:Apache、MySQL、Ubuntuなど)がDocker Hubに登録されており、ユーザーはこれらのイメージを簡単に取得・利用することができます。docker runコマンドでアクセスしていたイメージの多くは、このDocker Hubから取得されています。

Docker Hubの特徴

  • 公式イメージの豊富さ: 信頼性の高い公式イメージが多数公開されています。
  • ユーザーと組織のアカウント管理: 個人やチーム単位でイメージを管理・共有できます。
  • プライベートリポジトリ: 無料プランでも1つのプライベートリポジトリを作成可能です。
  • セキュリティスキャン: イメージの脆弱性を自動でスキャンし、レポートを提供します。

3.レジストリとリポジトリの違い

 レジストリリポジトリは、よく似た用語ですが、異なる概念です。以下の表でその違いを整理します。

項目説明
レジストリDockerイメージの配布場所全体。複数のリポジトリを含む。
リポジトリレジストリ内のイメージのグループ。特定のアプリケーションごと。

レジストリとリポジトリの関係

Docker Hubアカウントリポジトリ名イメージタグ
ABC社アカウントパッケージAパッチver11, ver12, ver13
MySQLver5.5, ver5.7, ver5.8, ver8
yamadaアカウントアプリケーションXlatest, v1.0, v2.0
suzukiアカウントサービスYrelease, beta, dev

図:Docker Hub内のレジストリとリポジトリの構造

Docker Hub
   ├── ABC社アカウント
   │    ├── パッケージAパッチ
   │    │    ├── ver11
   │    │    ├── ver12
   │    │    └── ver13
   │    └── MySQL
   │         ├── ver5.5
   │         ├── ver5.7
   │         ├── ver5.8
   │         └── ver8
   ├── yamadaアカウント
   │    └── アプリケーションX
   │         ├── latest
   │         ├── v1.0
   │         └── v2.0
   └── suzukiアカウント
        └── サービスY
             ├── release
             ├── beta
             └── dev

 このように、Docker Hubの中には各社や個人のアカウントが存在し、そのアカウントごとに複数のリポジトリが管理されています。それぞれのリポジトリには、異なるバージョンやタグが付けられたイメージが格納されています。

4.Dockerレジストリの利用メリット

Dockerレジストリを利用することで、以下のようなメリットがあります。

4.1 イメージの集中管理

 複数のプロジェクトやチームで使用するDockerイメージを一元管理できます。これにより、イメージのバージョン管理や共有が容易になります。

4.2 簡単なイメージの共有

 作成したイメージをDocker Hubにプッシュすることで、チームメンバーや他の開発者と簡単に共有できます。また、プライベートリポジトリを利用すれば、限られたユーザーのみがアクセスできるイメージの管理も可能です。

4.3 継続的インテグレーションとデプロイメントのサポート

 Docker Hubは、CI/CDパイプラインと連携することで、自動的にイメージをビルド・テスト・デプロイすることができます。これにより、開発から本番環境へのデプロイまでのプロセスがスムーズになります。

4.4 セキュリティ機能の提供

 Docker Hubは、イメージのセキュリティスキャン機能を提供しており、脆弱性の検出と対策を支援します。これにより、安全なコンテナ環境の構築が容易になります。

5.Docker Hubへの登録手順の概要

 Docker Hubへの登録は簡単で、以下のステップに従うことでアカウントを作成し、イメージの管理を開始することができます。

5.1 Docker Hubのウェブサイトにアクセス

  1. ブラウザを開き、Docker Hubにアクセスします。

5.2 アカウントの作成

  1. トップページの「Sign Up」ボタンをクリックします。
  2. 必要な情報(ユーザー名、メールアドレス、パスワード)を入力し、「Sign Up」をクリックします。

5.3 メール認証

  1. 登録したメールアドレスに確認メールが届きます。
  2. メール内のリンクをクリックしてアカウントを有効化します。

5.4 ログイン

  1. 有効化が完了したら、Docker Hubにログインします。
  2. ダッシュボードにアクセスし、アカウントの設定やリポジトリの管理を行います。

5.5 リポジトリの作成

  1. ダッシュボードの「Create Repository」ボタンをクリックします。
  2. リポジトリ名を入力し、公開(Public)または非公開(Private)を選択します。
  3. 必要に応じて説明を追加し、「Create」ボタンをクリックします。

5.6 イメージのプッシュ

ローカルで作成したDockerイメージにタグを付けます。

docker tag ローカルイメージ名 DockerHubユーザー名/リポジトリ名:タグ

例:

docker tag my-app:latest johndoe/my-app:v1.0

Docker Hubにログインします。

docker login

イメージをDocker Hubにプッシュします。

docker push johndoe/my-app:v1.0

 これで、作成したイメージがDocker Hubにアップロードされ、他の環境やチームメンバーと共有できるようになります。

次のコンテンツでは、タグとイメージのアップロードについて詳しく解説します。

まとめ

 ここでは、Docker HubとDockerレジストリについて基礎的な知識を解説しました。以下のポイントを押さえておきましょう。

  • Dockerレジストリの理解: DockerレジストリはDockerイメージの配布場所であり、Docker Hubはその中でも公式に運営される主要なレジストリです。
  • レジストリとリポジトリの違い: レジストリはイメージの配布全体を指し、リポジトリはその中の特定のイメージ群を指します。
  • Docker Hubの利用メリット: 公式イメージの豊富さ、簡単なイメージ共有、CI/CDとの連携、セキュリティ機能など。
  • 登録手順の概要: Docker Hubへのアカウント作成からリポジトリの作成、イメージのプッシュまでの基本的な流れを理解する。

 これらの知識を基に、次のコンテンツではタグとイメージのアップロードについて詳しく学び、Docker Hubを活用した効率的なコンテナ管理を実現しましょう。