
【Docker基礎】Wordpressコンテナの実行環境の解説
ここでは、Dockerを活用してWordPressの実行環境を構築する方法について詳しく解説します。これまでの4章までで、コンテナの作成や削除、ライフサイクル管理の基本を学びましたが、次のステップとして、複数のコンテナを同時に起動し、コンテナ同士で通信する方法を習得します。特に、WordPressのようなWebアプリケーションを運用する際には、2つのコンテナ(WordPressコンテナとデータベースコンテナ)が連携して動作する必要があります。5章では、この2つのコンテナの役割とその設定方法について詳しく見ていきます。

WordPressとは
WordPressは、世界中で広く利用されているオープンソースのコンテンツ管理システム(CMS)です。ブログから企業サイト、オンラインショップまで、さまざまなWebサイトの構築・運営に使用されています。以下に、WordPressの主な特徴を紹介します。
- 簡単なインストールと設定: 初心者でも容易にインストールでき、豊富なテーマやプラグインを活用してカスタマイズが可能です。
- 柔軟なデザイン: テーマを変更するだけで、サイトのデザインを簡単に変更できます。
- 拡張性: プラグインを追加することで、機能を拡張できます。例えば、SEO対策、セキュリティ強化、Eコマース機能など多岐にわたります。
- コミュニティサポート:: 大規模なユーザーコミュニティが存在し、問題解決や情報共有が活発に行われています。
WordPressは、その使いやすさと柔軟性から、個人ブログから大規模な企業サイトまで幅広い用途で利用されています。また、多数のプラグインとテーマが提供されており、ユーザーは自身のニーズに合わせてサイトをカスタマイズできます。
WordPressの構築と導入の流れ
WordPressをDocker環境で動作させるためには、以下のコンポーネントが必要です。
コンポーネント | 説明 |
---|---|
WordPress本体 | Webサイトのコンテンツ管理を行うソフトウェア。 |
Apache | Webサーバーとしての役割を果たします。 |
PHPの実行環境 | WordPressの動作に必要なスクリプト言語の実行環境。 |
MySQL | データベース管理システムとして、WordPressのデータを保存・管理します。 |
これらのコンポーネントは、それぞれ独立したDockerコンテナとして構築・起動することで、効率的かつ柔軟に管理することが可能です。以下の流れに従って、WordPressの実行環境をDockerで構築します。
- Dockerネットワークの作成: コンテナ同士が通信できるようにカスタムネットワークを作成します。
- MySQLコンテナの作成・起動: WordPressが使用するデータベースを提供するMySQLコンテナを起動します。
- WordPressコンテナの作成・起動: WordPress本体を動作させるコンテナを起動します。
- コンテナの稼働状況確認: 起動したコンテナが正しく動作しているか確認します。
- ブラウザでWordPressにアクセス: WordPressの初期設定画面にアクセスして、設定を完了します。
2つのコンテナが必要
WordPressをDocker上で運用するためには、2つのコンテナが必要です。それぞれのコンテナが異なる役割を担うことで、システム全体の柔軟性と拡張性が向上します。
コンテナ名 | 使用イメージ | 説明 |
---|---|---|
WordPressコンテナ | wordpress | WordPress本体、Apache、PHPの実行環境が含まれる公式イメージ。 |
MySQLコンテナ | mysql または mariadb | MySQLまたはMariaDBデータベースの公式イメージ。 |
WordPressコンテナ
- イメージ名:
wordpress
- 説明: この公式イメージには、WordPress本体、Apache Webサーバー、PHP実行環境が含まれています。これ一つでWordPressを動作させるために必要な基本的な環境が整っています。
- バージョン指定: 必要に応じて特定のバージョンを指定することができます。指定しない場合はデフォルトで「latest(最新版)」が使用されます。
MySQLコンテナ
- イメージ名:
mysql
またはmariadb
- 説明: MySQLデータベースの公式イメージです。WordPressのデータを保存・管理するために使用します。
- バージョン指定: 特定のバージョンを指定することで、環境の一貫性と安定性を確保できます。例えば、
mysql:5.7
やmysql:8.0
、mariadb:10.5
など。
MariaDBの利用
MySQLの代わりにMariaDBを利用することも可能です。MariaDBは、MySQLの派生ソフトウェアであり、互換性が高いため、MySQLと同様にWordPressのデータベースとして使用できます。
MariaDBとMySQLとの比較
項目 | MySQL | MariaDB |
---|---|---|
開発元 | Oracle Corporation | オラクル・ウィヴェアズがMySQLから離れた後、コミュニティ主導で開発 |
互換性 | 高い互換性を保つが、最新機能で差異あり | MySQLと高い互換性を保ちつつ、独自の機能も追加 |
パフォーマンス | 一部のクエリで最適化が進んでいる | 一部のワークロードでMySQLより優れたパフォーマンス |
エコシステム | 豊富なツールとサポートが存在 | 活発なコミュニティと拡張機能が提供されている。 |
DB選択のポイント
- 既存環境との互換性: 既にMySQLを使用している場合、そのままMySQLを継続することでスムーズに移行できます。
- コミュニティサポート: MariaDBはコミュニティによるサポートが強力で、オープンソースの精神を重視する場合に適しています。
- 特定の機能要件: 特定の機能やパフォーマンス要件がある場合、MySQLとMariaDBのどちらが適しているかを評価します。
MariaDBはMySQLとほぼ同等の機能を持ちながら、独自の機能拡張やパフォーマンス向上が図られているため、今後シェアが増えていくと予想されます。したがって、新規にデータベースコンテナを構築する際には、MariaDBの利用も検討する価値があります。
2つのコンテナの役割
コンテナ名 | 役割 |
---|---|
WordPressコンテナ | WebサーバーとしてのApache、PHP実行環境、WordPress本体の提供。 |
MySQL/MariaDBコンテナ | データベースとしての役割。WordPressのデータを保存・管理。 |
図: 2つのコンテナの関係性

この図は、WordPressコンテナがApacheを通じてHTTPリクエストを受け取り、PHPを介してMySQLコンテナにデータベースアクセスを行う様子を示しています。これにより、WordPressはデータベースにデータを保存・取得し、動的なWebサイトを提供することが可能となります。
今回はDBにMySQLを利用
今回の解説では、データベースとしてMySQLを利用します。 これは、多くのレンタルサーバーがMySQLをサポートしており、現状多くのユーザーがMySQLを利用しているケースが多いためです。以下に、MySQLを選択する理由とそのメリットをまとめます。
MySQLを選択する理由
理由 | 説明 |
---|---|
広範なサポート | 多くのレンタルサーバーやホスティングサービスがMySQLをサポートしており、互換性が高い。 |
豊富なドキュメントとコミュニティ | MySQLは長年にわたり広く使用されてきたため、ドキュメントやコミュニティサポートが充実している。 |
安定性と信頼性 | MySQLは安定したパフォーマンスと信頼性を提供し、大規模なWebアプリケーションでも使用可能。 |
豊富なツールとエコシステム | MySQLを管理・運用するためのツールやエコシステムが豊富に存在し、効率的な管理が可能。 |
MySQLのメリット
- 高いパフォーマンス: クエリの最適化やインデックスの活用により、高速なデータベース操作が可能です。
- セキュリティ機能: ユーザー認証やアクセス制御、データ暗号化などのセキュリティ機能が充実しています。
- スケーラビリティ: データベースのスケーリングが容易で、大規模なデータベースにも対応可能です。
- バックアップとリカバリ: データのバックアップとリカバリ機能が充実しており、データ保護が容易です。
以上の理由から、今回はデータベースとしてMySQLを利用します。MySQLはWordPressとの相性も良く、信頼性の高い環境を提供します。
まとめ
ここでは、WordPressをDocker環境で運用するために必要な2つのコンテナの準備について詳しく解説しました。以下のポイントを押さえておきましょう。
- 2つのコンテナの必要性: WordPressを運用するためには、WordPress本体を動作させるコンテナと、データベースとして機能するMySQLまたはMariaDBのコンテナが必要です。これにより、各コンポーネントを独立して管理・運用できます。
- Dockerイメージの選択: 公式イメージを使用することで、セキュリティや安定性が保証された環境を簡単に構築できます。必要に応じて特定のバージョンを指定することで、環境の一貫性と安定性を確保できます。
- MySQLとMariaDBの選択: MySQLとMariaDBは互換性が高く、用途や要件に応じて適切なデータベースを選択することが重要です。今回は、多くのレンタルサーバーでの利用状況を考慮し、MySQLを利用します。
- Dockerネットワークの重要性: コンテナ同士が通信するためには、同一のDockerネットワーク内で起動する必要があります。これにより、セキュアかつ効率的な通信環境を構築できます。
次からのコンテンツでは、具体的にDockerネットワークを作成し、WordPressおよびMySQLコンテナを起動する手順について詳しく解説します。これにより、複数のコンテナを連携させて実用的なWebアプリケーションをDocker上で運用する方法を習得します。引き続き、Dockerの学習を進めていきましょう。