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Linuxコマンドの基本:bashの設定:エイリアス(alias)

bashの設定:エイリアス

 Linux環境での作業効率を向上させるためには、シェルであるbashの設定をカスタマイズすることが重要です。WindowsやMac OSでアイコンの配置やテーマを自分好みに変更するのと同様に、Linuxでもユーザー環境を自由に設定できます。さらに、Linuxではカーネルの動作などシステムの基幹部分までユーザーが設定を行える柔軟性があります。

 ここでは、bashの設定の中でも特に便利なエイリアス(alias)の設定方法について解説します。エイリアスを活用することで、頻繁に使用するコマンドや長いオプションを簡略化し、作業効率を大幅に向上させることができます。

エイリアスとは

 エイリアスとは、特定のコマンドに別名を付けて、簡単に実行できるようにする機能です。これにより、長いコマンドや複雑なオプションを毎回入力する手間を省くことができます。

 例えば、lsコマンドに-Fオプションを付けると、ファイルやディレクトリの種類を示す記号が表示されます。しかし、lsコマンドは頻繁に使用するため、毎回-Fオプションを付けるのは面倒です。そこで、エイリアスを使ってlsコマンドに-Fオプションを自動的に付加することができます。

-Fオプションでファイル種別を表示

 -Fオプションを付けることで、ディレクトリには/、実行ファイルには*などの記号が付き、ファイルの種類が一目でわかります。

user01@ubuntu:~$ ls -F
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エイリアスの設定方法

エイリアスを設定するには、aliasコマンドを使用します。次の書式でエイリアスを定義できます。

【書式】
alias
別名='コマンド'

例:lsコマンドにエイリアスを設定

 下のコマンドを実行します。これで、lsと入力するだけで自動的にls -Fが実行され、ファイル種別が表示されます。

user01@ubuntu:~$ alias ls='ls -F'

エイリアス設定後のlsコマンドの実行

user01@ubuntu:~$ ls
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よく使われるエイリアスの例

 頻繁に使用するコマンドにエイリアスを設定することで、作業効率が向上します。以下に、よく使われるエイリアスの例を示します。

エイリアス内容
alias la='ls -a'隠しファイルを含む全てのファイルを表示
alias ll='ls -l'詳細情報付きでファイルを一覧表示
alias rm='rm -i'削除時に確認を促す(安全性向上)
alias cp='cp -i'コピー時に上書き確認を促す。
alias mv='mv -i'移動時に上書き確認を促す。
よく使われるエイリアスの例

注記:一部のLinuxディストリビューションでは、これらのエイリアスがデフォルトで設定されている場合があります。

エイリアスの確認と削除

エイリアスの確認

あるコマンドがエイリアスとして設定されているかを確認するには、typeコマンドを使用します。

例:lscpのエイリアスを確認

user01@ubuntu:~$ type ls
ls は 'ls -F' のエイリアスです

user01@ubuntu:~$ type cp
cp は /usr/bin/cp です
  • lsls -Fのエイリアスとして設定されています。
  • cpはエイリアスではなく、実行ファイルのパスが表示されています。

エイリアスの削除

設定したエイリアスを削除するには、unaliasコマンドを使用します。

エイリアスの削除方法

user01@ubuntu:~$ unalias ls

これで、lsのエイリアスが削除され、元のlsコマンドが実行されるようになります。

エイリアスを一時的に無効にする方法

 エイリアスを設定している状態で、一時的にエイリアスを無視してコマンドを実行したい場合があります。例えば、lsコマンドにエイリアスを設定しているが、1回だけオプションなしのlsを実行したい場合です。

エイリアスを一時的に無効にする方法は以下の3つがあります。

再度、下のコマンドを実行してエイリアスを作成しておきます。

user01@ubuntu:~$ alias ls='ls -F'

1.コマンドのフルパスを指定する

コマンドのフルパスを直接指定することで、エイリアスを無視して実行できます。

user01@ubuntu:~$ /bin/ls
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2.commandを使用する

commandをコマンドの前に付けることで、エイリアスを無視して実行できます。

user01@ubuntu:~$ command ls
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3.バックスラッシュ \ を先頭に付ける

 コマンドの前に \(バックスラッシュ)または\をを付けることで、エイリアスを無視できます。手軽に入力できるため、よく使われる方法です。

user01@ubuntu:~$ \ls
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まとめ

  • エイリアスを使用すると、頻繁に使うコマンドや複雑なオプションを簡略化でき、作業効率が向上します。
  • aliasコマンドでエイリアスを設定し、typeコマンドでエイリアスの確認、unaliasコマンドでエイリアスの削除が可能です。
  • エイリアスを一時的に無効にする方法として、フルパス指定、commandの使用、\ または\を先頭に付ける方法があります。

エイリアスを活用して、自分好みのbash環境を構築しましょう。