
Linuxコマンドの基本:Git:誤りから復旧する
ここでは、ワークツリーでの編集ミスからの巻き戻しと、誤ったコミットを取り消す方法の2つを取り上げ、各コマンドの役割と使い方を紹介します。
誤りからの復旧方法を知るメリット
Gitを使う最大のメリットの1つは、過去の状態に自由に戻れることです。開発作業中にミスが発覚した場合や、不要な変更を巻き戻したい場合に、Gitの復旧機能が役に立ちます。誤った編集や誤ったコミットを行ってしまっても、Gitを用いれば「時間を巻き戻す」ことが可能です。

ここでは、主に次の2つのケースでの復旧方法を解説します。
- ワークツリー(未コミット変更)に対する誤りからの復旧
- 過去のコミット(すでに履歴に残っている変更)に対する誤りからの復旧
いずれもGitコマンドを用いて簡潔に対処できるため、初めてのうちから覚えておくと、作業効率や安心感が向上します。
ワークツリーへの誤り対処:git checkout
コマンド
ワークツリーとは、実際にファイルを編集・保存している作業ディレクトリのことです。誤ってファイル内容を壊したり、不要な変更を加えてしまった場合、コミット前ならばgit checkout HEAD .
コマンドを用いて、ワークツリーを直前のコミット状態まで戻すことができます。この操作は、インデックスに登録済みの変更も含めて取り消すため、本当に破棄して良い変更なのか事前にgit diff
で確認することをお勧めします。
過去のコミットへの誤り対処:git revert
コマンド
コミットした内容が誤っていたと気づいた場合は、git revert
コマンドを使用します。git revert
は「過去のコミットで行われた変更を打ち消す新たなコミット」を作成するコマンドです。履歴からコミットを削除するのではなく、打ち消し用のコミットを追加するため、履歴の整合性が保たれ、後から誰がいつどのような変更を取り消したのかが明確にわかります。
よく使うGitコマンドと詳細解説
以下の表は、ここで紹介する復旧関連のコマンドと、その詳細な説明をまとめたものです。
コマンド・オプション | 概要 | 使用例 |
---|---|---|
git checkout HEAD . | ワークツリーとインデックスを最後にコミットされた状態に戻す。コミット前の未保存変更がすべて破棄されるので注意が必要。 | $ git checkout HEAD . |
git revert <コミットID> | 指定したコミットが行った変更を打ち消す新しいコミットを作成。過去の誤った変更を履歴上で明確に取り消すことが可能。 | $ git revert 93cea39 (93cea39は例) |
git diff | ワークツリーやインデックスとリポジトリの差分を表示し、変更を破棄する前に確認できる。 | $ git diff |
使い分けのポイント
- 未コミットの変更を巻き戻したい場合
git checkout HEAD .
でワークツリーをクリーンな状態に戻す。 - すでにコミット済みの誤りを取り消したい場合
git revert
で元に戻すための新たなコミットを行い、履歴をわかりやすく保つ。
注意点
コミット前の変更を破棄するコマンド(git checkout HEAD .
)は、現在の変更をすべて失います。そのため、破棄する前にgit diff
で必要な変更がないか慎重に確認しましょう。
また、git revert
はコミットを消し去るのではなく、「取り消しコミット」を新規で追加する点にも注意が必要です。履歴を残すことで、後から変更の流れを把握でき、透明性が確保されます。
まとめ
Gitが提供する復旧手段(git checkout
とgit revert
)を理解すれば、作業中にミスが生じても冷静に対処できるようになります。ワークツリーでの編集ミスはgit checkout HEAD .
で即座に巻き戻せ、過去のコミットミスはgit revert
で履歴を保ったまま修正可能です。
これらの操作を習得しておくことで、開発中のリスクを軽減し、安心して実験的な変更や大規模なリファクタリングにも挑むことができるようになります。いずれ必要な場面が必ず訪れるはずなので、ぜひ覚えておいてください。