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Linuxコマンドの基本:パスワード付きzipファイル

パスワード付きzipファイル
ファイルのアーカイブと圧縮は、システム管理やデータの保管、共有において重要な操作です。多くのファイルを整理して保存したり、他のユーザーとデータを共有したりする際に、ファイルをまとめて圧縮することで効率的に管理できます。また、Webサイトからダウンロードするファイルは多くの場合圧縮されており、そのままでは使用できません。そのため、アーカイブと圧縮の操作を習得することは不可欠です。
さらに、機密性の高いデータを扱う場合、データのセキュリティを確保するためにパスワードを設定することが重要です。ここでは、パスワード付きのzipファイルの作成と展開方法について、各コマンドの詳細な解説を交えて説明します。

パスワード付きzipファイルとは
- 定義:パスワード付きzipファイルは、圧縮ファイルにパスワードを設定し、認証なしでは展開できないようにしたものです。
- 目的:機密データの保護や、不特定多数へのデータ共有時のアクセス制限を行うため。
- 特徴
・パスワードを知らないとファイルを展開できない。
・圧縮とアーカイブを同時に行うため、複数のファイルやディレクトリをまとめて保護できる。
練習用のファイルを作成
まずは、パスワード付きzipファイルを作成するための練習用ディレクトリとファイルを作成します。
手順
1.ディレクトリの作成
mkdir dir
:dir
という名前のディレクトリを作成します。
user01@ubuntu:~$ mkdir dir
2.ファイルの作成
user01@ubuntu:~$ touch dir/file{1..9}
touch dir/file{1..9}
:dir
ディレクトリ内にfile1
からfile9
までの9つの空ファイルを作成します。- 波括弧
{}
を使用して連番のファイルを一度に作成しています。
3.作成したファイルの確認
user01@ubuntu:~$ ls dir
出力例
ls dir
:dir
ディレクトリ内のファイル一覧を表示します。
file1 file2 file3 file4 file5 file6 file7 file8 file9
パスワード付きzipファイルの作成
zip
コマンドを使用して、パスワード付きのzipファイルを作成します。
コマンド書式
【書式】zip -er <圧縮ファイル名> <圧縮対象パス>
-e
:パスワードの設定を有効にするオプション。-r
:指定したディレクトリ内を再帰的に圧縮するオプション。
具体例
user01@ubuntu:~$ zip -er dir.zip dir
dir.zip
:作成する圧縮ファイルの名前。dir
:圧縮対象のディレクトリ。
コマンド実行時の解説
1.コマンドの入力
user01@ubuntu:~$ zip -er dir.zip dir
2.パスワードの入力
Enter password:
- パスワードを設定するためのプロンプトが表示されます。
- 入力したパスワードは画面に表示されません。
3.パスワードの確認
Verify password:
確認のため、再度同じパスワードを入力します。
4.圧縮の進行状況
adding: dir/ (stored 0%)
adding: dir/file5 (stored 0%)
adding: dir/file1 (stored 0%)
adding: dir/file8 (stored 0%)
adding: dir/file7 (stored 0%)
adding: dir/file9 (stored 0%)
adding: dir/file4 (stored 0%)
adding: dir/file6 (stored 0%)
adding: dir/file2 (stored 0%)
adding: dir/file3 (stored 0%)
各ファイルが圧縮されていることを示すメッセージが表示されます。
オプションの詳細
オプション | 説明 |
---|---|
-e | パスワードを設定するためのオプション。実行時にパスワードの入力を求められます。 |
-r | ディレクトリを再帰的に圧縮します。指定したディレクトリ内のすべてのファイルとサブディレクトリが対象となります。 |
-q | 処理中のファイル名を非表示にします(quietモード)。 |
注意点
- パスワードは確実に覚えておくか、安全な場所に保管してください。忘れるとファイルを展開できなくなります。
- パスワードの強度を高めるために、英数字や記号を組み合わせた複雑なものを使用することをおすすめします。
パスワード付きzipファイルの展開
作成したパスワード付きzipファイルを展開するには、unzip
コマンドを使用します。
コマンド書式
【書式】unzip <圧縮ファイル名>
具体例
user01@ubuntu:~$ unzip dir.zip
コマンド実行時の解説
コマンドの入力
user01@ubuntu:~$ unzip dir.zip
パスワードの入力
Archive: dir.zip
[dir.zip] dir/file5 password:
- パスワード付きzipファイルの場合、展開時にパスワードの入力を求められます。
- 入力したパスワードは画面に表示されません。
ファイルの上書き確認
replace dir/file5? [y]es, [n]o, [A]ll, [N]one, [r]ename:
- 展開先に同名のファイルが存在する場合、上書きの確認が行われます。
A
を入力すると、以降のファイルをすべて上書きします。
展開の進行状況
extracting: dir/file5
extracting: dir/file1
extracting: dir/file8
extracting: dir/file7
extracting: dir/file9
extracting: dir/file4
extracting: dir/file6
extracting: dir/file2
extracting: dir/file3
各ファイルが展開されていることを示すメッセージが表示されます。
上書き確認の選択肢
入力 | 説明 |
---|---|
y | 該当のファイルのみ上書きする |
n | 該当のファイルを上書きしない |
A | すべてのファイルを上書きする(以降の確認を省略) |
N | すべてのファイルを上書きしない(以降の確認を省略) |
r | ファイル名を変更して保存する |
注意点
- 正しいパスワードを入力しないと、ファイルを展開することはできません。
- パスワードを複数回間違えると、エラーが発生します。
処理中のファイル名を非表示にする
ファイル数が多い場合、処理中のファイル名の表示を抑制することで、出力を見やすくすることができます。
zipコマンドで非表示にする
-q
オプションを追加することで、処理中のファイル名を表示しなくなります。
user01@ubuntu:~$ zip -erq dir.zip dir
unzipコマンドで非表示にする
-q
オプションを指定すると、展開中のファイル名が表示されません。
user01@ubuntu:~$ unzip -q dir.zip
セキュリティ上の注意
- パスワードの強度:簡単なパスワードは推測されやすいため、十分に複雑なものを使用してください。
- パスワードの保管:パスワードを安全な場所に保管し、必要な人だけがアクセスできるようにしましょう。
- 暗号化方式の限界:zip形式のパスワード保護は高度なセキュリティを提供するものではありません。機密性の高いデータには、より強力な暗号化ツール(例えば
gpg
など)を使用することを検討してください。
ここで作成したファイルを削除します
練習で作成したファイルやディレクトリを削除して、環境をクリーンに戻します。
コマンド
user01@ubuntu:~$ rm -rf dir dir.zip
rm -rf dir dir.zip
:dir
ディレクトリとdir.zip
ファイルを削除します。- 注意:
rm -rf
コマンドは強力な削除コマンドです。削除対象を十分に確認してから実行してください。
まとめ
パスワード付きzipファイルの利点
- ファイルをまとめて圧縮し、パスワードで保護できる。
- 機密データの簡易的な保護手段として利用可能。
- WindowsやmacOSなど、他のプラットフォームとの互換性が高い。
基本操作
圧縮
zip -er <圧縮ファイル名> <圧縮対象パス>
-e
:パスワード設定を有効にする。-r
:ディレクトリを再帰的に圧縮。
主なオプション
オプション | 説明 |
---|---|
-e | パスワードを設定して圧縮する。 |
-r | ディレクトリを再帰的に圧縮する。 |
-q | 処理中のファイル名を非表示にする(quietモード)。 |
展開
unzip <圧縮ファイル名>
パスワード付きの場合、展開時にパスワードの入力を求められる。
セキュリティ上の注意点
- パスワードの強度を高める。
- パスワードの安全な保管。
- 高度なセキュリティが必要な場合は、他の暗号化ツールの使用を検討。
応用
- 機密情報を含むデータの共有。
- バックアップデータの保護。
- 他のユーザーやシステムとの安全なファイル転送。
パスワード付きzipファイルの作成と展開方法を習得することで、データの保護や安全な共有が可能になります。実際にコマンドを試して、使い方に慣れていきましょう。