【Linux】CIDR表記

 CIDR(Classless Inter-Domain Routing)表記は、インターネット上で効率的かつ柔軟にIPアドレスを管理するために導入された技術です。従来のクラスフルアドレッシングでは、IPアドレスをA、B、Cなどのクラスに分け、固定されたネットワークサイズで管理していましたが、この方法ではアドレスの浪費が発生し、柔軟なネットワーク設計が困難でした。特にインターネットの急速な普及に伴い、より効率的なアドレス管理が求められるようになりました。

 CIDRは、クラスに依存せず、任意のサイズのネットワークを定義できるようにすることで、アドレス空間を最大限に活用し、ネットワーク管理を簡素化します。CIDR表記では、IPアドレスの後にスラッシュ(/)とネットワークプレフィックスの長さを記載することで、ネットワークのサイズを柔軟に指定できます。

クラスフルIPv4アドレスの限界

 クラスフルIPv4アドレッシングは、A、B、C、D、Eの5つのクラスにIPアドレスを分割して管理する方法です。各クラスには固定されたネットワークサイズがあり、特定のサイズでしかネットワークを分割できないため、アドレスの無駄が発生することがありました。特に、クラスCなどの小さなネットワークでは、多くのホストを持つネットワークに対応しきれない場合があり、一方でクラスAやクラスBでは、必要以上に広い範囲が割り当てられることが問題となっていました。

CIDRとは

 CIDR(Classless Inter-Domain Routing)は、クラスフルアドレッシングの限界を克服するために導入された技術です。CIDRは、IPアドレスのクラスに依存せず、柔軟にネットワークを分割できるようにするもので、アドレス空間の無駄を減らし、インターネット全体のルーティングテーブルを効率的に管理するために役立ちます。

CIDR表記

 CIDR表記は、IPアドレスとネットワークプレフィックスの長さをスラッシュ(/)で区切って表現します。たとえば、192.168.1.0/24は、IPアドレス192.168.1.0を持ち、ネットワーク部分が24ビットであることを示します。この表記法により、ネットワークの大きさを柔軟に調整できます。

具体例:192.168.1.0/26と4つのサブネット

 CIDR表記「192.168.1.0/26」を例に挙げて、その意味を詳しく解説します。この表記では、IPアドレスの先頭26ビットがネットワーク部を構成し、残りの6ビットがホスト部を構成します。これにより、1つのサブネットで最大64個のアドレスが使用可能になりますが、そのうちの2つはネットワークアドレスとブロードキャストアドレスに予約されるため、実際に使用できるホスト数は62台です。

項目
CIDR表記192.168.1.0/26
サブネットマスク255.255.255.192
ネットワーク部26ビット
ホスト部6ビット
利用可能なホスト数62台
ネットワークアドレス192.168.1.0
ブロードキャストアドレス192.168.1.63
ホスト範囲192.168.1.1 - 192.168.1.62
第0サブネット

 この表の通り、「192.168.1.0/26」のネットワークでは、192.168.1.0がネットワークアドレス、192.168.1.63がブロードキャストアドレスとなり、ホストアドレスとして使用できるのは192.168.1.1から192.168.1.62までです。

 「192.168.1.0/26」は、「192.168.1.0/24」を4つのサブネットに分割します。各サブネットについて表にまとめます。

サブネットサブネットアドレスホスト範囲ブロードキャストアドレス
0192.168.1.0/26192.168.1.1 - 192.168.1.62192.168.1.63
1192.168.1.64/26192.168.1.65 - 192.168.1.126192.168.1.127
2192.168.1.128/26192.168.1.129 - 192.168.1.190192.168.1.191
3192.168.1.192/26192.168.1.193 - 192.168.1.254192.168.1.255
192.168.1.0/26

 この表の通り、CIDR表記「192.168.1.0/26」は、64個のIPアドレスを持つサブネットを4つ作成することができます。それぞれのサブネットは、独自のネットワークアドレスとブロードキャストアドレスを持ち、異なるネットワークとして機能します。

まとめ

 CIDR(クラスレスドメイン間ルーティング)は、インターネット上で効率的かつ柔軟にIPアドレスを管理するための技術です。クラスフルアドレッシングの固定されたネットワークサイズの限界を超え、必要な範囲に応じたネットワークを柔軟に定義できるようになりました。CIDR表記を使用することで、ネットワークの設計と管理がより効率的に行え、アドレス空間の無駄遣いを減らすことができます。具体例として「192.168.1.0/26」の場合、64個のIPアドレスを持つサブネットが作成でき、さらにそれを分割することで、複数の小規模なネットワークを効率よく管理することが可能です。