トランスポート層
トランスポート層は、ネットワーク通信において重要な役割を果たす層で、TCP/IPモデルの第4層に位置します。この層は、データが正確かつ信頼性を持って送受信されることを保証するための機能を提供します。トランスポート層では、データの送信前に通信の確立を行い、データが正しい順序で届くように制御したり、必要に応じて再送処理を行ったりします。特に、TCP(Transmission Control Protocol)とUDP(User Datagram Protocol)という2つの主要なプロトコルが、この層で使用されており、通信の信頼性と効率性を確保するための異なるアプローチを提供しています。
トランスポート層の役割
トランスポート層の主な役割は、データのセグメント化、エラーチェック、再送制御、データの順序制御などを通じて、信頼性の高いデータ転送を実現することです。また、送信側と受信側の間で通信を確立し、切断するためのプロセスも行います。
トランスポート層は、ネットワーク通信における重要な役割を果たしています。具体的には、以下の機能を通じて、信頼性の高いデータ転送を実現します。
1.データのセグメント化
トランスポート層では、アプリケーション層から受け取ったデータを適切なサイズに分割(セグメント化)して、ネットワーク層に渡します。これにより、大量のデータを効率的に送信することが可能となります。各セグメントには、後で正しい順序で再構成できるようにシーケンス番号が付与されます。
2.エラーチェック
トランスポート層は、データが正確に送信されることを保証するために、各セグメントにエラーチェック情報(チェックサム)を付加します。受信側では、このチェックサムを使って受信したデータが正しいかどうかを確認します。エラーチェックにより、データの損失や改変が検出されると、再送信の要求が送信側に送られます。
3.再送制御
エラーチェックによってデータの誤りが検出された場合、トランスポート層は、誤ったデータのセグメントを再送するように制御します。これにより、データが正しく届くまで再送が行われ、信頼性の高い通信が実現されます。再送制御は、TCPプロトコルで特に重要な役割を果たします。
4.データの順序制御
送信側でデータが分割された場合、受信側でそのデータが正しい順序で再構成される必要があります。トランスポート層は、セグメントに付けられたシーケンス番号を基に、受信したデータを正しい順序で並べ替えます。これにより、アプリケーション層に渡されるデータが元通りの順序で処理されることが保証されます。
5.通信の確立と切断
トランスポート層は、送信側と受信側の間で通信を確立し、データの送受信が完了した後に通信を切断する役割も担います。TCPプロトコルの場合、通信の確立には「3ウェイハンドシェイク」と呼ばれるプロセスが用いられます。これにより、両者が通信を開始する準備が整ったことを確認します。また、通信終了時には、接続を安全に切断するためのプロセス(4ウェイハンドシェイク)が行われます。
これらの機能により、トランスポート層は、データ通信の信頼性と効率性を確保する重要な役割を果たしています。特に、TCPプロトコルではこれらの機能がしっかりと実装されており、インターネット上の多くのアプリケーションで利用されています。
TCPとUDP
トランスポート層には、TCP(Transmission Control Protocol)とUDP(User Datagram Protocol)という2つの主要なプロトコルがあります。
TCP(コネクション型プロトコル)
- データの送受信前に、送信元と受信先の間でコネクション(接続)を確立します。
- データが確実に送られるよう、エラーチェックや再送、順序制御を行います。
- 例えると、TCPは「書留郵便」のように、荷物の追跡や受領確認が行われ、確実に届けられることが保証されます。
UDP(コネクションレス型プロトコル)
- データの送受信前にコネクションを確立せず、データを一方的に送信します。
- エラーチェックや再送は行わないため、通信のオーバーヘッドが少なく、リアルタイム性が求められる通信に適しています。
- 例えると、UDPは「普通郵便」のように、送りっぱなしで追跡や受領確認がないため、必ずしも届くとは限りません。
コネクション型とコネクションレス型
- コネクション型は、通信を開始する前に送信元と受信先の間で接続を確立し、通信が終了するまで接続を維持します。これにより、データの送信が正確に行われることを保証しますが、その分オーバーヘッドが大きくなります。
- コネクションレス型は、接続を確立せずにデータを送信するため、オーバーヘッドが小さく、迅速な通信が可能です。ただし、データの到達を保証しないため、信頼性は低くなります。
TCPとUDPの特徴と違い
特徴 | TCP | UDP |
---|---|---|
通信方式 | コネクション型 | コネクションレス型 |
データの信頼性 | 高い | 低い |
通信速度 | 遅い(オーバーヘッドが大きい) | 速い(オーバーヘッドが小さい) |
順序制御 | あり | なし |
データ再送 | あり | なし |
使用例 | Webブラウザ、メールなど | ストリーミング、VoIP、オンラインゲームなど |
まとめ
トランスポート層は、ネットワーク通信の信頼性と効率性を担う重要な層であり、TCPとUDPという2つの主要プロトコルを理解することで、適切なプロトコルを選び、最適な通信を実現することができます。TCPは信頼性を重視する場面に、UDPはリアルタイム性を求める場面に適しています。